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読書の秋におすすめの本9選

東京・岩手と分かれて執筆活動を続ける「文学ナビ」の執筆チームが、読書の秋に読んでおきたい「おすすめ本」9冊を紹介していきます。日を追うごとに冷たくなっていく都会の風を感じながら、ついつい思い出してしまう「あの作品」や、もう少し寒くなってしまえば読みづらくなってしまう「今が旬の本」を、チャット感覚で話してまとめました。

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カプチーノを飲みながら書きました(笑)

秋の夜長におすすめの本3選

読書の秋に読みたい!ということなので、やはり「秋」を感じることのできる作品をまずは紹介したいと思います。ちょっと肌寒い季節に、なぜか読みたくなる本ってありますよね。暖かいリビングのソファーにもたれながら読みたい…そんな本を少しだけピックアップしてみました。

ピアノ・レッスン / アリス・マンロー

ピアノ・レッスン(Dance of the Happy Shades) は、カナダ出身の作家であるアリス・マンローの作品集で、15の短篇作品が収められたものです。湖のほとりにある田舎町で育った主人公にとって、普段見聞きしていた世間話やうわさ話はごく当たり前のものだったのですが、さまざまな体験を通じていくなかで、一つの世界観がそこにはあることを知っていきます。

そして同時に、その世界のなかで生きる人間が尊く、また限定的であることも学んでいくようになるのです。ある場所に生きる人々が何を見て、何を感じているのか、そういった生の記録を断片的にまとめてみせた(それもとてもユーモラスに!)作品だと感じた短編集です。ついついショートトリップがしたくなる秋におすすめの一冊ですね。

幽霊たち / ポール・オースター

怪談話といえば「夏」という印象が強いと思います。 しかし、こんなことを言ってはなんですが、少し涼しくなってきた秋口の方が「幽霊」や「お化け」などは姿をあらわしやすいのかもしれません。 わたしたちが夏に怪談話をしているのは、暑い夏を乗り切ろう!という想いがあるからなのですが、実際の登場シーンというのは柳の木の下や、夕暮れの薄暗い帰り道だったりするものです。季節が変化するこの時期に、なんとなく不気味な印象を抱くのは僕だけでしょうか。

とはいえ、ポール・オースターが書いた『幽霊たち』にはいわゆる「幽霊」が登場するわけではありません。この物語は、ある日、ブルーのところにホワイトという名の男がやってきて、「必要がなくなるまで、ブラックという名の男を見張ってほしい」と依頼をすることから始まります。仕事はいたってシンプルで、ブラックを見張り、その行動についてレポートを作成するといったもの。やがて変化していくブルーの心境に注目です。

階段を下りる女 / ベルンハルト・シュリンク

3選とも海外作家の作品となってしまいましたが、この『階段を下りる女』はベルンハルト・シュリンクの新境地とも言われている作品です。新潮クレストブックスの書評では「最初から最後まで、こんなに絵画的な小説を初めて読んだ」と書かれたほど、全体の印象が綺麗だと言わざるを得ません。あの世界的ベストセラー『朗読者(The Reader)』の作者が、一枚の絵をめぐって揺れる4人の男女の人生の終局を描いた作品となっています。

230ページほどのボリュームで、かつ場面が回想シーンなどで分かれているので、少しずつ読みたい方にもおすすめの作品です。

読書の秋に「夏」を思い出せる本6選

一通り「秋」を感じた後は「夏」を感じられる作品を紹介していきたいと思います。過ぎ去っていった季節について書かれた作品ってどうなの?と思われる方もいるかもしれませんが、意外とこれが良かったりします。考えてみれば、みんな寒い冬が近づくにつれて「夏が恋しい!」と言いますし、暖かくなってきた春先には「早く夏よ来い!」なんて言ってますよね。そういうわけで、ちょっぴり肌寒い季節に、「夏が舞台の小説を読んでみる」という提案をしていきたいなと。

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夏の嘘 / ベルンハルト・シュリンク

先ほどチラッと紹介しました、ベルンハルト・シュリンクの作品をまたまた紹介していきたいと思います。この『夏の嘘』は著者の短編集となっていて、7つのショートストーリーから構成されています。それぞれが独立した物語で、あえて伏線のようなものを言うとするならば、様々な人間の「大事な選択」を断片的に描写してみせた作品、ということになるでしょうか。やわらかく言えば、今の生活は振り返ってみれば「あの瞬間」に始まった、というものであったり、いかにして私は「あの時」にそういった行動をとってしまったのか、という回想の物語が多いということですね。

察しの良い方には分かるかもしれませんが、この作品のテーマには「嘘」や「秘密」といった言葉がぴったり合います。あるいは人間それぞれが持つ「無意識」の延長線上にある出来事、という言い方もできるかもしれません。難しい言葉を使えば「文化資本」といった言葉が適当な感想になる場合もあるでしょう。この作品を読むことによって、さまざまな境遇にある人間のリアルな生が感じられますが、それと同時に「嘘」をつくのはやはり夏がいいな、とも思わせてくれます。

黙禱の時間 / ジークフリート・レンツ

日本ではあまり知られていない海外作家の一人かもしれません。僕も新潮クレストブックスでお目にかかるまでは全く知りませんでした。ドイツ出身の作家で、また訳者がベルンハルト・シュリンクの翻訳を担当している松永美穂さんということで「読もう!」と決心したのを今でも覚えています。無駄のない文章の松永美穂さんのおかげもあってか、短い文章ながら物語に流れる静かな島の雰囲気が伝わってきましたね。

主人公の青年の回想シーンを中心に構成されているこの作品には、悲しい離別を乗り越えようとする青年の「強さ」と「静かな祈り」がこめられています。ぜひ一人の時間を作っていただいて、作品の世界観に浸ってほしいと強く思う作品です。

17歳のヒット・パレード(B面) / 伊藤たかみ

簡単なあらすじとしては、18歳になる年の夏、二人の男女が海辺の街で無茶苦茶な生活を送っていく様子を描いた作品、というところでしょうか。退屈しのぎに色々な人の人生に「お邪魔して」、終いには誰にも止められないくらいにヒートアップしてしまう、そんなお話です。ストーリーというか、論理的なところは欠落してしまっているようにも感じてしまうので、感想なり意見というのは分かれると思いますが、僕はこの作品が好きで、ことあるごとに読んでしまいます。(笑)

長編を読むのが苦手な方、どちらかといえば詩やエッセイが好きという方にとてもおすすめの作品です。ページも少なく、詩的な印象が強い小説となっているので、気分転換で読むのもありだと思いますね。

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乗り物に乗って坂道を駆け下りていく二人。

遠い太鼓 / 村上春樹

「ある朝目が覚めて、ふと耳を澄ませると、何処か遠くから太鼓の音が聞こえてきた。…(中略)…とても微かに。そしてその音を聞いているうちに、僕はどうしても長い旅に出たくなったのだ」(本著p19より)とあるように、この作品は著者が実際に旅に出た日々の記録を綴ったものです。ヨーロッパを奥さんと回りながら、いろいろな土地のいろいろな人々・風景を眺めては文章を書いていく、そんな緩やかな日々の想い出がたくさん詰まったエッセイ集となっています。

著者はエッセイでもなければ紀行文でもないし、どちらかといえばスケッチブックのようなものだ、と書いていましたが、本当に「記録」という言葉がぴったり合うような節がいくつもあります。ただ起こった出来事に、少しのユーモア(皮肉)をこめて語ったものと言えなくもありません。しかし、そこには意外にも読者にとって発見が多く、気付きを多く与えてくれるのだと僕は読んでいて感じました。異国の知らない文化を知ることによって、自分の生活を振り返ることができるのは良い機会だったりしますよね。

使いみちのない風景 / 村上春樹

タイトルに惹かれて買ってしまった本なのですが、これがまた良い作品でした。僕はかなりエッセイ好きなところがあって、色々な作家のエッセイを読んでいるのですが、この作品には他のエッセイ集にはない独特の雰囲気があります。それはおそらく文章の途中に挟まれている写真の影響もあると思うのですが、その二つの呼応というか、息の合ったレイアウトが読者を不思議な感覚へと誘うように感じました。もちろん散文ではあるのですが、とても詩的な印象を受ける作品です。

ランゲルハンス島の午後 / 村上春樹

「ランゲルハンス島」と聞いて、いったいどこの国の島なんだろう?と思った読者も多いのではないでしょうか。名前の感じではヨーロッパの少し暖かいところにあるのだろう、、と最初は思っていたのですが、実はこの島は人間が船に乗って入港したり、小型のセスナ機でランディングできたりするような島ではなくて、島は島なのですが、人間の体内にある島、というかなり特殊な島なのです。

いろんな人が読んで、たしかにそれって心地いいよね、と思ってしまうことばかりが書かれているだけで、とりわけ気を引くコンテンツがあるかと聞かれるといささか返答に困ってしまいます。とはいえ、同時に感じてしまうのは、「ランゲルハンス島って実際に行けたならこういう気分なのかな」とか「じゃあヨーロッパの知らない島々と一体どこが具体的に違うのだろうか、、」ということで、人によってはシンキングタイムに入ってしまうこともあるかもしれないですね。でもそれはそれで愉しい時間になるはず。だって秋の読書だから。

まとめ

読書の秋におすすめの小説をいくつか紹介していきました。気になる小説・本は見つかったでしょうか。読み慣れた作家の作品を深く読んでいくのも良いと思いますが、せっかくの読書の秋なので、新しい作家の作品に挑戦してみてもいいのかなと。きっと素晴らしい発見に出会えるはずです。

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