本当に読書に効果はあるのか?読書の利点を3つのカテゴリーで分析! - 文学ナビ
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本当に読書に効果はあるのか?読書の利点を3つのカテゴリーで分析!

この記事を読んでいるあなたは、これから読書を始めたいと思っている人でしょうか、それともだんだん読書が習慣になってきた人でしょうか。中には、読書が本当に子どもにもメリットがあることなのかと半信半疑な気持ちでこの記事を読んでいる人もいるかもしれません。

自分のためであれ子どものためであれ、読書が本当に効果的なものなのか不安に思っているのかもしれません。すぐには結果が出ないものなのですから。

いずれにせよ一つだけ確かなことはあります。読書家の先人たちが実感してきた効果を知った上で読書を続けることは、より大きな効果を得られるということです。

今回は、読書の利点を3つのカテゴリーに分類して、特に重要なものをピックアップしました。

読書の利点を分類する3つのカテゴリーとは

読書の利点は、実際のところ無数にあるといって良いでしょう。そしておそらく、時代の変化に伴ってどんどん増えていくものなのです。

たとえば、今後IT技術が進んでいく中で、人間社会における人工知能の存在感が大きくなっていくと言われています。そうなった時、社会の価値観が大きく変化して、その変化に対応するように、読書に求められるものもまた変化していくはずです。

しかし、読書に求められるものが変化していくとしても、その効果や利点は大きく3つのカテゴリーのどれかに追加されていくだけにすぎません。

その3つのカテゴリーとは、「言葉」「思考」「心(精神)」です。それぞれのカテゴリは、板チョコみたいにきれいに分割できるものではありませんが、読書の利点を考える補助線になってくれるはずです。

「言葉」カテゴリーに属する利点

まずは、「言葉」のカテゴリーに属する読書の利点を紹介していきます。

おそらく読書の効果について考える上で、ぱっと思いつくものが、この「言葉」のカテゴリーに属するものでしょう。

一般的に想像しやすい効果として、語彙力や文章力の向上などがあると思いますが、これらがまさに「言葉」カテゴリーに属するものなのです。では、詳しく見ていきましょう。

語彙力アップと、その深い意味

知っているよ、という人もちょっと立ち止まって読んでいもらいたい。実は、「語彙力アップ」という言葉は、すごく深い意味があるのです。読書の持つメリットの多くは、この「語彙力アップ」に付随して現れるものだと言っても過言ではありません。

さて、言葉を一つ覚えるというのは、新しいポケモンを一匹捕まえる、というのとは訳が違います。どういうことでしょうか。

言語学者のソシュールは、言語というのは、一つのシステム(体系)だといいます。別の言い方をすれば、一つの言語が、蜘蛛の巣のような複雑なネットワーク(網の目)になっているのです。

だからどうした、という感じですが、このことが「語彙力アップ」ということの深い意味を教えてくれるのです。

ネットワークのある任意の点を選ぶとしましょう。その点をひとつの「語彙」だと考えてください。ネットワークですから、その点はどこかと必ずつながっています。そのまたどこかの点も、別の点とつながっています。

そうやって辿っていくと、いずれ全ての点を通ることでしょう。これは、あるちっぽけな一つの語彙は、他の全ての語彙と何かしら関係を持っているということを教えてくれます。

すると、語彙を覚えるというのを別の捉え方ができることに気がつきます。つまり、1つ語彙を覚えると、その言葉と、別のたくさんの言葉との「関係」をも知ることになるのです。

料理について考えてみましょう。すでに用意されている食材に、たった1つだけでも食材が増えると、作れる料理の数が一気に増えることは容易に想像できることでしょう。

レシピというのは、「関係」の総体です。だから、食材が1つ増えて「関係」が無数に作られることによって、レシピもたった1つの食材によって、たくさん生み出されるのです。

「語彙を覚える」=「言葉の新しい関係に出会う」。これが、「語彙力アップ」の持つ本当の意味なのです。

新しい関係に出会えばそれは新しい発想やおもしろい比喩、豊な文章表現へと広がっていきます。このことは独立した利点として紹介していきます。

しかし、ここで紹介した「関係」というキーワードは、このあとの文章でも隠されたメッセージとしてほのめかされています。

文章力が格段に上がる

文章力の向上という効果も、「言葉」のカテゴリーに入れても良いでしょう。そして、この効果を期待して読書を始める人も多いと思います。

実際のところどうなのかというと、読書は確かに文章力をアップさせてくれます。では、読書のどんなところが、文章力に影響してくるのでしょうか。主に3つ挙げられます。

  • 語彙が増えることによるもの
  • 新しい表現に出会うことによるもの
  • わかりやすい文章に触れることによるもの

まず、2つ目について。

読書を進めていくといずれ気が付くことの一つとして、言葉の自由さという点です。もっといえば、日本語という言語の自由度の高さを知ることになります。

長く本を読まなかったり、SNS上のテンプレートな文章ばかり読んでいくと、自分が言葉を使うときに、使い慣れた言葉や、定型にはまった文章ばかりを使うようになってしまいます。

しかし、作家のひねりにひねって生み出した文章に接していくうちに、そのような定形性に対する感度が鍛えられ、自分の文章の味気なさに気が付けるようになってきます。結果的に、それが良い文章へとつながっていくことでしょう。

そして、3つ目のわかりやすい文章について。

注意しなければいけないのは、「わかりやすい」と「簡単な」とは別ものだということです。そしてまさに、この二つの区別がつくことが、良い文章をかけるかかけないかの分水嶺になるのです。

ものによりますが、多くの作品は、この「わかりやすさ」に注力して文章を書いています。そうして文章にたくさん触れることによって、自分の文章がわかりやすいか否かの判断もできるようになってくるのです。

2つ目にも3つめにも共通していることは、読書というのは、自分の文章を第三者が読むように客観的な視点から読めるようにするために効果的だ、ということです。そしてこのことが、何よりも重要な文章術なのです。

「思考」カテゴリーに属する利点

ここでは、読書の効果や利点のうち、「思考」のカテゴリーに属するものを紹介していきます。

このカテゴリーは、特に仕事に直結するものがあるでしょう。なので、ここで紹介する読書の効用を意識しながら、本を読むことによって、より有意義な読書ができるはずです。

創造力・想像力が豊になる

「創造力」と「想像力」とは一見すると別物のように感じます。確かに、それ自体は別のものですが、この2つの力は、読書のとある特徴によって養われるという点で似たものなのです。

その特徴とは、別の世界を仮想的に生きることができる、という点です。

別の世界というと、それでは小説だけから得られる効用なのか、というとそうでもありません。確かに小説の効果は大きいです。しかし、重要なことは、読書という行為は、作家の視点に生きるということです。

その意味で言えば、読書というのは、どのようなジャンルであっても、私の世界ではない、他の誰かの世界を生きることになるのです。

それが小説の場合、その登場人物や、架空の世界に生きられるというので、他のジャンルとは少しだけ趣が異なるというだけのことです。

さて、仮想的に別の世界を生きることによって、現実世界の私が持つ身体的な限界を飛び越えることによって、全く未知の体験をすることができます。そのことによる、創造力・想像力の向上は容易に想像できることでしょう。

読解力が鍛えられる

本を読んでいくと、自ずと読むスピードが上がってきます。これは、読解力が上がったことによる効果です。

読解力とは何か。

これは一概に言えるものではありません。多くの要因が絡み合うことによって生まれる効果です。

しかしあえて言えば、それは先を読む力のことです。先を読むためには前の文章も理解していなければなりません。そして、今読んでいる文章もしっかり内容を把握している必要があります。

そして、何かを読解するというのは文章に限った話ではありません。文字が関わらない現実のニュースや相手の言動など、読解力が求められる場面はたくさんあります。

それに対して読解力を鍛える主要な場所は、まさに本の中にあります。人生の様々な場面で要求される読解力が、読書で手軽に鍛えられるのです。

「心」カテゴリーに属する利点

最後のカテゴリーは「心(精神)」に関わるものです。

このカテゴリーに属するメリットは特に、あると知っておくことだけでいろんな場面で活躍してくれるものです。

メタな視点を獲得できる

メタな視点とは一体何でしょうか。

これは言ってしまえば、仮想的に幽体離脱するようなものです。

幽体離脱することで自分を外から眺めることができるように、今自分がどんな気持ちでいるか、どうしてああいう行動をするのかに対して、分析を加えることができるのです。

しかし、自分を外から眺めてみるということ自体は、意識すれば割と誰でもできることです。では、読書することによってどんな追加の効果があるにでしょうか。

メタな視点を持ったときに重要になってくるのが、外から眺めたときの自分の心のありようを「分析」することです。本を読んでいれば、心理学で言うあの状態だなとか、あのときの主人公もこんな感じだったのかなとか。

こうした分析を加えることで、今の自分の状態がありふれたものだということに気が付けるのです。それに気が付けば、なんかだんだんアホらしくなってくることはよくあることです。

リラックスできる

本を読むことでリラックス効果を得ることもできます。

この効果に関しては様々な研究があります。

特に小説においては、読者である私たちは別の世界に身をおくことで、現実の世界から一旦現実逃避することができます。

眠れない夜などは、無理やりにでも別の世界に浸りながら眠気を待つのも良いでしょう。

読書の効果に関する研究

ここでは簡単に、読書が実際に科学的な効果をもたらすことについて書いていきます。主に、『デジタルで読む脳✖︎紙の本で読む脳』で書かれていることになります。

文字を読むという行為は後天的なもの

まず重要なことは、人は文字を読むという行為を後天的に獲得していくということです。

当然じゃないかという声も飛んできそうですが、これが本当に意味するところは、すごくショッキングなものです。つまり、人の脳には文字を読むための機能など元々備わっていないということです。

大抵、文字を読む機能が元々あって、そこが徐々に鍛えられるというプロセスを想定されがちですが、そうではないのです。語弊はありますが、読字という脳の機能はゼロから生まれたものなのです。そういう意味で後天的だというのです。

たくさん本を読むということは、それだけ脳に対して大きな影響力を及ぼすのです。

読み聞かせは意味あるの?

この記事を読んでいる人の中には、子ども(赤ちゃん)が本を読むことに対して、本当に効果があるのかと疑いを持っている人がいるかもしれません。

ずばり、赤ちゃんでも読み聞かせの効果は絶大です。

こんな研究があります。

小さなこどもに読み聞かせをして、そのときの脳の活動を調べてみました。すると驚くことに、読み書かせを聞いている子どもの脳は私たち大人が言語活動をするときと同じ領域が活性化していたのです。

だから、理解していないだろうと言って読みきかせをしないことは、とてももったいないことなのです。

本を読みながら運動している!?

本を読むとき脳はどんな働きをしているのでしょうか。普通に考えれば、文字を読むための機能が働いているのだろうとは想像がつきます。

ただ、それだけではないのです。

たとえば、私たちが運動をするときに働く脳の部位が活性化することもあるのです。特に、読んでいる本の登場人物が運動していたりすると、それに合わせて脳の運動皮質という部分も活性化しているのです。

本を読むことで想像力が鍛えられるというのは、こういうところからも言えるのです。実際に登場人物たちと一緒に同じことをする経験を通じて、私たちは想像力を高めていくのです。

最後に

今回は、読書の利点を3つのカテゴリーに分けるという、ちょっと特殊なことをしてみました。しかし、今後このカテゴリー意識しながら読書を進めていくことで、効率的に読書の利点を享受することができるでしょう。