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さらば積読のうしろめたさ

本好きがある度合いを超えると、いつしか「積読」という言葉を覚えます。それはえてして読んでいない本が増えてきた頃に、そしてそのことに後ろめたさを感じ始めた頃に、救いの言葉のように忽然と現れてくるもの。積読は僕だけのことじゃなかったのか、と。

しかし、一時は救いの言葉であったはずの「積読」も、いつしか積もり積もって毒となります。それにもかかわらず、僕たちはその毒を抱えながらも本を積むのでしょう。

ところが、今ここに解毒剤が開発されました。それは、永田希の『積読こそが完全な読書術である』です。

今回は、具体的な内容の説明というより、『積読こそが完全な読書術である』という本のスリリングな論の展開の魅力を伝えたいと思います。

『積読こそが完全な読書術である』はどんな本?

『積読こそが完全な読書術である』の紹介

積読を考えるために、まず本とは何か

タイトルからわかるように、この本は積読を推奨します。積読に後ろめたさを感じる必要はないと主張します。それでは内容は単に積読礼讃なのだろうとも思いそうです。果たしてそうなのでしょうか?

積読は読書術である

タイトルをもっとすっきりさせましょう。「完全な」という装飾を取り払うと「積読は読書術」となります。

すると、途端に、「え?」って感じになります。タイトルの「完全」という言葉に引っ張られて、積読礼讃的な内容を想像してしまいがちですが、「積読は読書術」という言葉からは、もっと、読書術の一つとしての積読、というイメージが強くなります。

そうです。確かに、積読を推奨することも目的の一つであると思いますが、タイトルでは、読書の方法論としての積読のススメをこそ主題としているのです。

本とは何か、どこにあるのか

方法論としての積読を説明するためには、まず本とはどんな存在のものなのかを説明しなければなりません。

なぜなら、積読という非能動的(に思える)行為を、能動的たる読書という行為の下に配置するためには、本とはどんなものかという問いで橋渡しをしなければいけないからです。つまり、本の存在論的な説明を通じて、積読の能動性を明るみに出すのです。

書物の定義

そこで、永田はジャン=リュック・ナンシーによる書物の定義を引き合いに出します。それは、書物とは「閉じと開かれのあいだにあるもの」という定義です。

あらかじめ述べたように、今回は内容に深入りしません。なので、この定義がどのように重要性を帯びてくるのかは、実際に読んでもらうこととしましょう。

今言えるのは、本の「閉じ」た状態、今回の文脈で言えば、積読状態の本も書物の本質的なあり方だ、ということです。

本は読めない?

永田は、いろんな読書家を引き合いに出しますが、特にこの本の論の展開にとって重要な存在は、ピエール・バイヤールの『読んでいない本について堂々と語る方法』という本です。

挑発的なタイトルの本ですが、内容はかなり本質的です。大雑把にいうと、僕たちは本を完全に読むことなどできないのだ、ということです。

この本の読めなさこそが、「閉じと開かれのあいだにあるもの」という本の定義と絡み合うことによって、積読の積極的な側面を明るみに出すことになるのです。

積読にもやり方がある

本書の論の展開のしかたをざっとみたところで、今度は、積読そのものについてはどのようなことが書かれているのかを、触りだけみていこうと思います。

ビオトープ的積読環境

本書では、積読のやり方として、ビオトープ的積読環境という言葉が使われます。これは、自律的積読環境と言い換えることもできます。

なぜビオトープなのかは実際に本を読んでもらうこととして、ここでは、自律的積読環境について簡単に説明します。

情報の濁流で生きる

現代は情報が氾濫していると言われます。僕たちの多くは日々、無数の情報に流されて、地に足をつけることができていない状況です。

それでも構わないという人は少なからずいることでしょう。一方で、そういった状況になんとか抗いたくて、本を読んでより正確な情報や考えを得ようとする人もいるでしょう。

しかし、そういったいわば「真面目」な人たちは、なぜか積読のうしろめたさを感じてしまっています。その原因が、非自律的な積読にあります。目的のない積読といってもいいでしょう。

情報の濁流に抗って地に足をつけるためには、読書は効果的ですが、それは目的を持った積読、自律的な積読を行うことによってその効果を発揮するのです。

その意味で、積読の中でも自律的な積読は、能動的な読書なのだと言えるでしょう。

おわりに

今、積読でうしろめたさ感じているのならば、『積読こそが完全な読書術である』という薬があります。この機会に、試してみてはどうでしょうか。

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