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【超独断】2019年発売されたおすすめの本

カメさんの言う通り、今年は豊作だなぁと思います。まぁ、実のところ、たぶん毎年「今年は豊作」とか言いそうですけど、それでも(来年も言うかもしれないけど)今年は豊作だと言えます。見る人によっては今回選んだ本は、「偏ってるなー」と思うかもしれません(実際偏っているので仕方ないのですが)。ミステリーとか、ホラーとか、ファンタジーとかが無いですし。ただ、逆にあるテーマみたいなものはあります。それは、これらが僕ら読者を深い思索の谷間へと導いてくれるということです。

ところで、トリさんはどうなったのでしょうか。それは、亀のみぞ知るところです。(決まった)

1.ブレイディみかこ『僕はイエローでホワイトで、ちょっとブルー

著者はイギリス在住のコラムニスト兼保育士。つまり、保育士兼コラムニストでもある。この本は、そんな彼女が、中学に上がった息子の一年間をユニークに描いたものです。しかし、この本でのユニークさは、イギリスの政治と、その政治に見捨てられた下層の人びととの間に生まれた歪みから、膿のように出てきたものであって、額面通りに「ユニークだ」という読み方ではあまりに軽薄でしょう。

何はともあれ、まず一章。一章を読んでもらいたい(立ち読みでもいい)。一章を読み終わってこのタイトルの意味を理解したときに、涙さえ流すかもしれない。そして、子どもがいるならば、子どもとの向き合い方も変わるだろう。

2.エトガル・ケレット『銀河の果ての落とし穴』

そうか!そういう感じか!

と、

気づいたときには、すでに落とし穴の中にいることでしょう。この本では、そんな新しい読書体験が待っている。いつもとちょっと違うものを読みたい。そう思ったのなら、強くおすすめする。

軽妙で、ユーモラス、そしてその仮面の下のシニカルさは、ケレット独自の特徴と言えます。読者にはぜひ、その仮面を楽しむことと同時に、その仮面の下にあるものに立ち会ってもらいたいと思います。

3.岸政彦『図書室』

とても静かな物語である。しかし、読む側の心を揺さぶってやまない。きっと、今までにあまり読んだことのないような物語(記憶)だとおもう。

主人公は中年の女性だ。本を買いに外に出かけながら、ある物語を思い出す。本が好きな少女と、本が好きな男の子の物語である。その物語は、女性の小さなころの、自分自身の物語だ。

中編程度の長さで、とても読みやすい文章なので、ぜひ読んでもらいたい。ちなみに著者は社会学者。

4.又吉直樹『人間』

著者は説明するまでもない。綾部の相方だ。

まぁ、間違いではないが、心の中で突っ込んでほしい。「いや、芸人で芥川賞取ったやつだろ!」。で、今回の小説は、明らかにそんな自分をモデルにしているような奴が出てくる。が、主人公ではない(いや、主人公も又吉っちゃ又吉なんだが・・・)。

それにしても、いかにも賛否の出そうな内容だ。あえて内容説明はしないが、僕は、この小説は、表面的な賛否を吹き飛ばすような凄みがあると思う。それと、最後3文の1で、舞台が沖縄(特に名護)に移るところにも注目してほしい。ここでこそ、又吉の考える「人間」がでてくる。

5.川上未映子『夏物語』

すでに、世界十数か国での翻訳が決定している傑作です。

人を一人この世界に生み出すということについて、真剣に考えたことはあるでしょうか。一人の、悩み苦しみ怒り、時に他人を傷つけながらも、それを見て見ぬふりをしながら笑って生きる人間を、その逆に、喜び慈しみ、傷ついた他人を傍に寄り添うことができる人間を、この世界に登場させてしまうということについて、真剣に考えたことはあるでしょうか。

真剣にものを考えるということは、苦痛を伴うことです。最終的にどのような結論に落ち着くとしても、真剣に考えるその先には、子を一人世界に放つということの暴力性、無慈悲さ、あるいは身勝手さに直面しなければならなはずです。

主人公の夏子もまた、大いに苦しみます。そしてある一つの決断を下します。彼女の決断に対して反発するも肯定するも、彼女のたどった悩みの道筋をたどることは、死を選べるのにも関わらず生きてしまっている私たちにとって必要なことだと、僕は思います。

最後に

ここに5冊紹介したのだけれど、こうして振り返ってみると、生きることって大変だなーと思いました。この五冊はどれもこれも、頑張って生きている人たちが主要な登場人物です(ケレットはまたちょっと違うけど)。2020を迎える前に、これらを読んで生きることについて考えてみてはどうでしょうか。

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