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【文学賞解説】芥川賞と直木賞|おすすめの受賞作も

おすすめの芥川・直木賞作品

それでは、いくつか受賞作品を紹介していきます。

おすすめの芥川賞作品

まずは芥川賞です。芥川賞は、対象が純文学なので、ストーリー的に退屈に感じる作品があるかもしれません。が、ここでは、十分にエンターテインメント性も兼ね備えた作品を紹介します。

川上未映子『乳と卵』(2007年下半期)

東京にいる主人公夏子の元に、姉の巻子と、その子どもの緑子が大阪からやってきます。巻子は豊胸手術をすると言い、娘の緑子はそのことに、言い知れぬ違和感を感じる。なぜ豊胸をするのか、私を生んで育てたせいで小さくなったからなのか、だったら生まなければよかったじゃないか。

そんな緑子は、少し前からしゃべらなくなりました。「しゃべれない」のではなく「しゃべらない」のです。しかし、無口なひとがそうであるように、彼女のっ心の中ではとても饒舌。そんな思いを書き記した日記とが物語の合間合間に挟まれて、いいアクセントを利かせています。

ちなみに、この続編ともいえる作品が今年(2019年)に発表されました。素晴らしい作品です。こちらで、簡単に紹介しています。

又吉直樹『火花』(2015年上半期)

近年でこれほど話題になった受賞作品も珍しいのではないでしょうか。

売れない芸人で主人公の徳永と、先輩芸人の神谷を中心に展開される物語。徳永は神谷に弟子入りを願い、神谷もまた、自分の伝記を書けと無茶ぶりをする。

そんな二人の掛け合いは、まさに芸人が書いたのだな、というユーモアがあり、一方で、又吉が尊敬してやまない太宰治を思わせる、深くくどくどした内省が、読み手に今までにない新鮮な読書体験を与えてくれます。

今村夏子『むらさきのスカートの女』(2019年上半期)

淡々と物語を展開させながらも、最初から最後まで不穏な空気を漂わせる作風が魅力の作家です。

この小説もはじめから「むらさきのスカートの女」の世間でのうわさを書き連ねていって、謎を膨らませていきます。しかし、風船がはじけるように謎が解消されるミステリーではなく、時間が経つと知らぬ間にしぼんでいく風船のような物語です。

何を言っているのかという感じですが、とにかく、謎が解けていく爽快さはないということはお伝えしておきます。それでもなお、読者の心をつかんで離さない魅力にあふれています。

ちなみに、「そうか、こういうのも芥川賞なのか」と思うことでしょう。何が純文学なのかわからなくなってきます。

おすすめの直木賞作品

これまでも説明したように、直木賞はエンターテイメント性が強いので、ストーリー展開の面白さがあって、読みやすいものが多いです。が、芥川賞と違い、受賞作の中には、長大な作品もありますのでご注意を。

佐藤正午『月の満ち欠け』(2017年上半期)

人気作家の伊坂幸太郎がべた褒めする作家です。

一言でいうと、生まれ変わりの物語です。しかし、ファンタジックなものではなく、極めてリアルに生まれ変わりが描かれます。

「もしかしたら、生まれ変わりというものもあるのかもな」と思わされる作品です。

こちらも別の記事で紹介しているのでぜひ。

真藤順丈『宝島』(2018年下半期)

戦後の沖縄を舞台にした物語です。

基本的に戦後沖縄の史実に従って書かれており、また、綿密な調査を重ねた形跡がみられる細部への気配りがあり、さらに、縦横無尽に方言が使われていて、あたかも自分がそこにいるような錯覚を覚える作品です。

著者自身は沖縄の出身でもないのに、素晴らしい功績だと思います。沖縄を知りたい人にもおすすめです。

沖縄についてならば、こちらの記事でも紹介しています。

最後に

【解説§文学賞】ということで、今回は芥川賞と、直木賞という日本を代表する文学賞を紹介しました。おそらくここまで読んだ人は、その区別の意外な曖昧さに驚いたことでしょう。ですが逆にいうと、芥川賞だからとか、直木賞だからという安易な理由で、一方を退ける必要もないということです。なので、これを機に、賞の境を無視して、評価された作品たちを読んでみてはどうでしょうか。

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